3月に入り、ドルに対する円相場は急激に円高方向に振れ、ついに1ドル100円の大台を突破しました。一般的に、輸入中心の企業であれば円高の恩恵を受けることになり、輸出中心の企業であればその反対ということになります。世界的に原材料が高騰していることを考えると、多くの資源を海外に依存している我が国にとっては、決して悪いことばかりではないという論調もあるようですが、いずれにせよ急激な変化というのは決して望ましいものではないと思われます。
折角、円相場に注目が集まっている時期ですので、講義ではあまり触れなかった、外貨換算の会計処理について数回に渡ってお話していきましょう。外貨換算の会計処理は、経済のグローバル化に伴い、非常に重要な会計分野です。また、中小企業も積極的に海外取引を行う時代であり、中小企業の経営者も知っておくべき会計とも言えます。
まず、海外の通貨を用いて表現された項目を日本円によって表現しなおす手続きを換算と言います。10ドルの商品を購入した場合に、現在の円相場が1ドル98円だった場合には、この商品の価格は980円ということになります。この換算という手続き自体は、海外旅行や海外通販が普通に行われる現在ですから、決して難しいものではないでしょう。
海外に子会社がある企業では、海外通貨で表現された決算書を円に換算する必要があります。その海外通貨の決算書を換算する際、どの時点の円相場を用いるべきなのかという点に関しては、会計上大きな論点があります。一番分かり易い方法が、単一レートによる決算日レート法という考え方です。これは、決算日の為替レートで全ての項目を円換算してしまう考え方です。ところが、この考え方には、決算書に掲載されている情報の時点が過去の様々な時点であるという特徴からすると、問題があるとの指摘があります。会計には、取得原価主義と時価主義という大問題があることは何度もお話してきました。原則的に取得原価主義という考え方を採用しながらも、有価証券に代表されるように時価主義の考え方が広く会計制度に織り込まれるようになりました。現在の価格である時価の項目を現在の価格である決算日のレートで換算することは会計処理として合理的であると思われますが、例えば10年前の価格で載っているものを現在のレートで換算することは果たして合理的なのでしょうか。これにも様々な考え方があります。
そこで、外貨取引等会計処理基準では、複数のレートを用いる方法として、流動・非流動法、貨幣・非貨幣法、テンポラル法という3つの方法を規定しています。細かいことは割愛させてもらいますが、これら3つの方法に共通していることは、取引時の相場(過去の相場)と決算日の相場(現在の相場)の複数レートが用いられることから、そのレートに差があった場合には換算差額が生じることになります。この差額は利益の場合もあれば損失の場合もあります。特にこの利益は、換算によって得した部分ですが、決してその金額の円をもらったわけではありませんので、収益の認識基準である実現主義を満たしているかといった論点もあります。
単純に円に直す換算という作業だけでも、これだけ多くの会計的な問題を孕んでいます。
次回も外貨換算の会計処理の話を続けたいと思います。 |